2023.07.15
7月7日より公開となった本作の公開を記念して、山下敦弘監督と、本作の企画段階でご協力くださり、最新作『炎上する君』が 8月4日から渋谷シネクイントで公開される、ふくだももこ監督をお迎えしてトークイベントを実施いたしました。
冒頭から、映画を見終えたばかりの観客に「最高だったでしょ!!」と投げかけるハイテンションなふくだ監督の横で、「ジブリの映画の初日なのにありがとうございます」と山下監督が笑いを誘うと、和やかな雰囲気でトークがスタート☻
2021年に日本公開されたオリジナルの台湾映画『1秒先の彼女』を観て、「これをリメイクしたい!」とすぐに思い立ったというふくだ監督。男女の設定を反転させるというアイデアについては「オリジナル版を観た時、丁度映画の編集作業をしていて脳がクリエイティブな状態だったので、“男女反転”のアイデアはすぐに思い浮かびました。それで名乗りをあげましたが、その時既に山下監督で企画が進んでいたんですよね」と経緯を語りました。
山下監督は「オリジナルは郵便局で働く女性と、バス運転手の男性の物語ですが、その役に合う日本版のキャスティングが全く決まらなくて。ふくださんやプロデューサーからでてきた“男女反転”の案で話し合ううちに岡田将生くんの名前が出たんです」と、そのアイデアがきっかけで企画が一気に進んだと明かしました。
また、自身のなかで京都を舞台にするアイデアもあったというふくだ監督。「京都は“時間の流れ”が日本のどことも違う感じがするので。天橋立のロケーションまでは考えていなかったのですが、オリジナル版の美しい海辺をバスが走るシーンは、誰でもあれをやりたい!という衝動がきっとありますよね」と語りました。山下監督は「でも、天橋立は国定公園なのでバスが通れないのとドローンも飛ばせなくて…そこで人力車を活用するアイデアが出ました。あと、本作の重要なアイテムとしてバスが登場しますが、京都はバス文化が根強いからという理由もありましたね」と舞台設定の経緯を振り返りました。本作の岡田将生さん演じるハジメのキャラクターが大好きだと語るふくだ監督が、ハジメのクセの強いキャラクター設定について問いかけると、「ハジメは“洛中・洛外”にこだわりがあるし、1秒早いし、イケメンなのにモテないし、キャラが渋滞してるよね(笑)」とてんこ盛りなハジメの性格について笑いながら振り返りました。岡田さんとは『天然コケッコー』以来 16 年ぶりのタッグとなった山下監督。「岡田くんとはお互いが若い頃に知り合って一緒に作品を作っているので、最初はちょっと照れ臭かったです。岡田くんから“この役どうしましょう?”だなんて、昔はそんなこと言ってなかったのに!(笑)」と現場で岡田さんの成長を感じたエピソードを嬉しそうに語っていました。
トークショー当日に公開されたジブリの某アニメ映画の話題になると、ふくだ監督が「早速今日観てきたんですけど、クリエイターが自分の命をかけて、自分の作りたいものに従っている姿ってすごく良いなと思いました。作家性を感じる喜びという意味ではこの映画にも通じる部分があると思います」と大絶賛。山下監督は「宮崎駿監督とは比べないで!」と謙遜しながらも、「でも、すごく頑張ったよ。だってシーン数がめちゃくちゃ多いんだもん!ひとつのシーンでも、前半と後半パートの2回分を撮影しないといけないから現場は大変でした。今回、自分なりにいつもよりテンポ早めにシーンを繋げてみたつもりが、できあがったものはそこまで早くなくて。自分の作品が何故“オフビート”と言われるか理由がよくわかったね(笑)」と自身の作家性を分析していました。
清原果耶さん演じる1秒遅いレイカの話題になると、宮藤官九郎さんが脚本で書いたレイカと、完成した映画ではまた違った印象になっていると言う山下監督。「脚本のレイカはもう少しコミカル寄りでしたが、実際に清原さんがそれをやると少しギャップがあり、真っ直ぐで芯のある演技をする清原さん本人に少し寄せていきました」と振り返りました。
「撮影当時、清原さんはまだ 20歳でしたが、存在感が強くしっかりとした演技をする人なので、これからいろんな役を演じていくはず。コメディ演技もすごく良かったから、ぜひもっと見たいね!」と山下監督が太鼓判を押すと、ふくだ監督も激しく称賛していました。
まだまだ話足りない雰囲気の中、あっという間に 25 分のトークが終了。「少しでも長くこの映画が上映されますように」という監督の締めの挨拶をもって、イベントは幕を閉じました。